「防災の日」に考える地震予測技術のこれから
9月1日、防災の日に寄せて
本日9月1日は「防災の日」です。1923年の関東大震災が起きた日にちなみ、1960年に制定されて以来、私たちは毎年この日に、地震をはじめとする自然災害への備えを見つめ直してきました。
しかし「備える」という言葉の中身は、この数十年で大きく変わりつつあります。かつては発災後の避難や復旧が防災の中心でしたが、近年は観測データと解析技術の進歩により、「発災前にどれだけリスクを見積もり、行動につなげられるか」という視点が加わってきました。私たちが地震予測技術の高度化に取り組んでいるのも、まさにこの変化の中にあります。
令和8年熊本地震が突きつけたもの
本年7月28日16時27分頃、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1(Mw6.8)の地震が発生し、熊本県宇城市・八代郡氷川町で最大震度7を観測しました。気象庁はこの地震を「令和8年熊本地震」と命名しています。震度7の観測は2024年の令和6年能登半島地震以来約2年半ぶり、そして熊本県内では平成28年(2016年)の熊本地震以来10年3か月ぶり、県内では3回目という記録になりました。
この地震が私たちに突きつけたのは、「一度大きな地震を経験した地域が、再び同等以上の揺れに見舞われる」という現実です。平成28年熊本地震から10年という歳月は、決して短い時間ではありません。しかし地殻という時間スケールで見れば、それは「起こりうる範囲」の出来事だったといえます。防災を「過去の被災経験」だけに頼ることの限界を、この地震は改めて示したと考えています。
「予測」という言葉に、私たちが込めている意味
地震予測というと、「いつ・どこで・どれくらいの地震が起きるかをピンポイントで言い当てること」を想像される方が多いかもしれません。しかし現在の地震科学において、そうした決定論的な予知は実現していません。私たちも、そのことを正直にお伝えする立場でありたいと考えています。
私たちが目指している「予測の高度化」とは、次のようなことです。
確率的な評価の精緻化:活断層や地殻変動データ、過去の地震活動履歴をもとに、地域ごとの発生確率や想定規模の見積もり精度を上げていくこと
観測網とデータ解析の強化:GNSS(衛星測位)や地震モデルデータをリアルタイムで統合的に解析し、地殻の「今」をより高い解像度で捉えること
早期検知・早期警報の高速化:発生した揺れをいち早く検知し、本震到達前の数秒から数十秒を、避難行動や設備停止に活かせる情報として届けること
知見の可視化と発信:専門的な解析結果を、自治体や企業が実際の行動に落とし込める形に翻訳すること
「絶対に当てる予知」ではなく、「不確実性を認めた上で、その確からしさを一段ずつ高めていく予測」。これが、私たちの取り組みの土台にある考え方です。
令和8年熊本地震から学ぶ、次への備え
令和8年熊本地震では、有明海・八代海に津波注意報が発表されたことも記憶に新しいところです。内陸直下型の地震であっても、沿岸部では津波への警戒が必要になるケースがあること、また一度大きな被害を受けた地域であっても油断はできないことを、私たちは改めて学びました。
平成28年から令和8年へ。10年という時間の中で、耐震化やハザードマップの整備は進みました。一方で、次にどの地域が同じような揺れに見舞われるかは、依然として私たちの目には見えていません。だからこそ、観測とデータ解析の力で「見えないものを、少しでも見える形に近づける」努力を続ける必要があると、私たちは考えています。
おわりに
防災の日は、特別な備えを始める日ではなく、「毎年の備えを点検する日」だと私たちは捉えています。ご家庭の備蓄や避難経路の確認とあわせて、お住まいの地域の地震リスクについて、一度立ち止まって考えてみていただければと思います。
私たちは、令和8年熊本地震のような出来事から一つひとつ学びを重ね、地震予測技術の高度化を通じて、皆様の「もしも」に少しでも早く、少しでも確かな情報を届けられるよう、これからも研究と開発を続けてまいります。







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